2D CADに慣れた身から言わせて頂くと、3D CADにとっつきにくい最大の理由は、3D CADで用いられている独特の言語だ。
2D CADの世界でも特殊な言葉は飛び交っているのだが、何故か同じメーカーの(例えばAutoDesk社)CADであっても2Dのそれと3Dのそれは違う。
しかもぜんぜん。
中学の時から英語を学んで、それなりに理解して使ってきたのに、今日からフランス語を使いなさい!!なんて言われた感じ。かな?
セボンがGoodの意味であることすらわからなかった(トイレの芳香剤の名前だとしか知らなかった)
10年間フランス語圏に暮らした結果、当たり前にフランス語が理解できる。(自慢か?)
諦めずに付き合ってさえいれば、なんだって自分のものになる!!
ならば、少しでもとっつきやすく工夫をしよう!!
そんなわけで、「3D 翻訳辞書」を作ってみたのです。
初めからその言葉使えよ💢!!!
私もそう思います。
基本概念の翻訳
「スケッチ」
❌ 「スケッチを作成します」 ✅ 「断面図を描きます。2D図面の正面図や側面図と全く同じです」
「拘束」「制約」
❌ 「拘束条件を追加します」 ✅ 「寸法の基準を決めます。2D図面で『この辺から測る』って決めるのと同じです」
具体例:
- 「同心拘束」→ 「中心を合わせる。2D図面で中心線を揃えるのと同じ」
- 「平行拘束」→ 「平行にする。2D図面で//(平行記号)を付けるのと同じ」
- 「垂直拘束」→ 「直角にする。2D図面で⊥(直角記号)を付けるのと同じ」
- 「接線拘束」→ 「滑らかに繋げる。2D図面でRと直線を滑らかに繋ぐのと同じ」
「完全定義」「不完全定義」
❌ 「スケッチが完全定義されていません」 ✅ 「寸法が足りません。2D図面で『あと何ミリか分からない』状態と同じです」
補足説明: 「2D図面で、寸法をいくつか入れ忘れると製造できませんよね。それと同じで、3Dも『形が確定するまで寸法を入れる』必要があるんです」
形状作成の翻訳
「押し出し」
❌ 「押し出しフィーチャを作成します」 ✅ 「奥行き(厚み)を付けます。2D図面の正面図に、側面図の厚み情報を加えるイメージです」
具体例: 「この平面図(スケッチ)を、30mm上に持ち上げる。つまり高さ30mmの立体にする、ということです」
「回転」
❌ 「回転フィーチャを作成します」 ✅ 「断面形状をぐるっと回します。旋盤加工と全く同じイメージです」
具体例: 「シャフトを2D図面で描く時、半分の断面だけ描きますよね。それを中心線でぐるっと回転させれば、円筒形になります。旋盤で削るのと同じです」
「フィレット」
❌ 「フィレットを追加します」 ✅ 「角を丸めます。2D図面でC面取りやR面取りを指定するのと同じです」
具体例: 「2D図面で『R5』って書くところを、3Dでは実際に丸く作るだけです」
「面取り」
❌ 「面取りフィーチャを追加します」 ✅ 「角を斜めに落とします。2D図面で『C2』って書くのと同じです」
「穴」
❌ 「穴フィーチャを配置します」 ✅ 「穴を開けます。2D図面で穴の寸法・深さ・座ぐりを書くのと同じ情報を入れるだけです」
具体例: 「2D図面だと『φ10 深さ20 座ぐりφ20×5深さ』って書きますよね。3Dでは文字で書く代わりに、実際の形として作ります。でも考えることは全く同じです」
特に重要: 「タップ下穴の計算、座ぐりの寸法、皿モミの角度…あなたがいつもハンドブックで確認していること、全部Inventorが知ってます。だから指定するだけでOKです」
「シェル」
❌ 「シェルコマンドを使用します」 ✅ 「中を空洞にします。鋳物や樹脂成形品で『肉厚5mm』って指定するのと同じです」
具体例: 「箱型の部品で『板厚3mm』って図面に書きますよね。それを3Dでは、実際に3mmの厚さの箱として作ります」
「パターン」
❌ 「パターンを作成します」 ✅ 「繰り返しコピーします。2D図面で『4-φ10穴』って書くのと同じです」
種類別:
- 「矩形パターン」→ 「等間隔で並べる。ボルト穴を一列に並べるのと同じ」
- 「円形パターン」→ 「円周上に並べる。フランジのボルト穴を均等配置するのと同じ」
「ミラー」
❌ 「ミラーフィーチャを作成します」 ✅ 「左右対称にコピーします。2D図面で対称形状を省略して描くのと同じ考え方です」
アセンブリ関連の翻訳
「アセンブリ」
❌ 「アセンブリファイルを作成します」 ✅ 「組立図を作ります。複数の部品図を一つにまとめる、2Dの組立図と同じです」
「配置」「挿入」
❌ 「コンポーネントを配置します」 ✅ 「部品を置きます。2D組立図に部品を書き込むのと同じです」
「拘束」(アセンブリでの)
❌ 「アセンブリ拘束を追加します」 ✅ 「部品同士の位置関係を決めます。2D組立図で『ここに嵌る』『ここでボルト留め』って描くのと同じです」
種類別の翻訳:
「合致」 ✅ 「面と面をピッタリ付けます。2D図面で『密着』って書くのと同じ」
「角度」 ✅ 「角度を決めます。2D図面で『90°』とか角度寸法を入れるのと同じ」
「接線」 ✅ 「滑らかに接触させます。ベルトとプーリーの関係みたいなものです」
「挿入」 ✅ 「軸と穴を嵌めます。シャフトを軸受けに入れる、ボルトを穴に通す、そういう関係です」
「対称」 ✅ 「中心線で左右対称に配置します」
「干渉チェック」
❌ 「干渉を解析します」 ✅ 「部品同士がぶつかっていないか確認します。2D図面では見落としがちな『この部品、ここで他の部品に当たっちゃう』を見つけられます」
図面化関連の翻訳
「図面ビュー」
❌ 「ベースビューを作成します」 ✅ 「正面図を配置します。2D図面の正面図・平面図・側面図と全く同じです」
「投影ビュー」
❌ 「投影ビューを作成します」 ✅ 「他の方向から見た図を追加します。正面図を描いたら、側面図・平面図を追加するのと同じです」
「断面ビュー」
❌ 「断面ビューを作成します」 ✅ 「切断面を作ります。2D図面で『A-A断面』って描くのと全く同じです」
重要な説明: 「3Dモデルを切断線で切って、内部を見せる。2D図面の断面図と考え方は同じですが、3Dなら『どこで切っても自動で描いてくれる』のが便利な点です」
「部分拡大図」
❌ 「詳細ビューを作成します」 ✅ 「部分拡大図を作ります。2D図面で細かい部分を拡大して描くのと同じです」
「寸法」(図面での)
❌ 「寸法を配置します」 ✅ 「寸法を入れます。2D図面と全く同じです。ただし3Dから自動で測ってくれるので、計算ミスがありません」
パラメータ・変数関連の翻訳
「パラメータ」
❌ 「パラメータを設定します」 ✅ 「寸法に名前を付けます。『軸径』『全長』みたいに。そうすると後から変更しやすくなります」
具体例: 「2D図面で『この寸法が変わったら、連動してここも変わる』ってメモ書きしますよね。それを3Dでは自動でやってくれるんです」
「式」「数式」
❌ 「パラメータに式を入力します」 ✅ 「寸法同士の関係を決めます。『穴径の2倍』とか『全長の1/3』みたいに」
具体例: 「2D図面で『参考寸法』って括弧書きするような、他の寸法から計算できる寸法、ありますよね。それを3Dでは自動計算させるんです」
ワークフロー・作業関連の翻訳
「フィーチャ」
❌ 「フィーチャツリーを確認します」 ✅ 「作業履歴を見ます。『最初に四角を描いて、次に穴を開けて、最後に角を丸めた』という手順が記録されています」
重要な説明: 「2D図面だと完成形しか残りませんが、3Dは『どういう順番で作ったか』が全部記録されます。だから後から『あの穴、やっぱり要らない』って削除するのも簡単です」
「編集」
❌ 「フィーチャを編集します」 ✅ 「寸法を変更します。2D図面で寸法を書き直すのと同じですが、3Dなら関連する形状が全部自動で変わります」
「サプレス」
❌ 「フィーチャをサプレスします」 ✅ 「一時的に消します。2D図面で補助線を点線にして目立たなくするような感じです。完全に削除するわけではありません」
「ロールバック」
❌ 「フィーチャツリーをロールバックします」 ✅ 「途中まで戻ります。『穴を開ける前の状態』とか『面取りする前の状態』に戻って確認できます」
具体例: 「2D図面だと『あれ、この寸法変える前はどうだったっけ?』って困りますよね。3Dなら作業履歴を巻き戻して確認できます」
材料・プロパティ関連の翻訳
「材料」
❌ 「マテリアルを割り当てます」 ✅ 「材質を決めます。2D図面の表題欄に『SS400』とか『A5052』って書くのと同じです」
重要な追加説明: 「材質を指定すると、重量が自動計算されます。2D図面だと体積を計算して比重を掛けて…って手計算してたこと、全部自動です」
「質量特性」
❌ 「質量特性を確認します」 ✅ 「重さや重心位置を確認します。2D図面では計算が大変だったこと、3Dなら一瞬で分かります」
表示・ビュー関連の翻訳
「シェーディング」
❌ 「シェーディング表示にします」 ✅ 「立体的に表示します。まるで実物を見ているような表示です」
「ワイヤーフレーム」
❌ 「ワイヤーフレーム表示にします」 ✅ 「線だけで表示します。2D図面に近い表示です。複雑な形状の時、見やすいことがあります」
「断面解析」
❌ 「断面解析を実行します」 ✅ 「中を覗きます。実際に切断せずに、内部構造を確認できます」
データ管理関連の翻訳
「パーツファイル」
❌ 「パーツファイルを作成します」 ✅ 「部品のファイルを作ります。2D図面の部品図と同じです。ただしファイルの拡張子が.dwgじゃなくて.iptになります」
「アセンブリファイル」
❌ 「アセンブリファイルを作成します」 ✅ 「組立図のファイルを作ります。拡張子は.iamです」
「図面ファイル」
❌ 「図面ファイルを作成します」 ✅ 「2D図面のファイルを作ります。これは今まで通りの図面です。拡張子は.idwです」
重要な説明: 「3Dモデル(.ipt)と2D図面(.idw)は別ファイルです。でもリンクしているので、3Dを変更すると2D図面も自動で変わります。便利ですよね」
「参照」「リンク」
❌ 「参照関係を確認します」 ✅ 「どのファイルとどのファイルが繋がっているか確認します。組立図と部品図の関係みたいなものです」
詳細設定関連の翻訳
「原点」
❌ 「原点を設定します」 ✅ 「基準点を決めます。2D図面で『ここを0,0にする』って決めるのと同じです」
「作業平面」
❌ 「作業平面を作成します」 ✅ 「補助的な平面を作ります。2D図面で補助線を引くのと似ています。『この面を基準に、次の形状を描きたい』という時に使います」
「作業軸」
❌ 「作業軸を作成します」 ✅ 「補助的な中心線を作ります。回転の中心や、対称の基準として使います」
「作業点」
❌ 「作業点を作成します」 ✅ 「補助的な点を作ります。『ここを基準に寸法を測りたい』という時に使います」
高度な機能の翻訳
「ロフト」
❌ 「ロフトを作成します」 ✅ 「断面形状を滑らかに繋げます。例えば、丸から四角へ、形が徐々に変わっていくような形状です」
具体例: 「配管の継手で、丸パイプから角パイプに変わる部分、ありますよね。あれを作るイメージです」
「スイープ」
❌ 「スイープを作成します」 ✅ 「断面形状を道筋に沿って伸ばします。例えば、配管やホースのような形状です」
具体例: 「パイプを曲げた形状を作る時、『この断面(円)を、この曲線に沿って伸ばす』という感じです」
「コイル」
❌ 「コイルフィーチャを作成します」 ✅ 「バネやネジを作ります。らせん状の形状です」
「リブ」
❌ 「リブを作成します」 ✅ 「補強のための板を追加します。鋳物や樹脂部品でよく見る、薄い板状の補強材です」
具体例: 「2D図面で『リブ厚3mm』って断面図に書くところ、3Dでは実際の形として作ります」
「抜き勾配」
❌ 「抜き勾配を適用します」 ✅ 「金型の抜き方向に角度を付けます。鋳造や成形品で『抜き勾配2°』って指定するのと同じです」
重要な説明: 「あなたが図面に『抜き勾配2°』って書いていたこと、3Dでは実際にその角度で作ります。製造の人が見たとき、『ああ、ちゃんと抜き勾配付いてる』って一目で分かります」
解析関連の翻訳
「応力解析」
❌ 「FEA解析を実行します」 ✅ 「強度計算をします。どこに力が集中するか、どこが弱いか、色で表示してくれます」
具体例: 「今まで、手計算や専門家に頼んでいた強度確認、簡易的にですが自分でできます。『この肉厚で大丈夫かな?』って設計初期段階で確認できるんです」
「メッシュ」
❌ 「メッシュを作成します」 ✅ 「計算用に細かく分割します。気にしなくていいです。自動でやってくれます」
「境界条件」
❌ 「境界条件を設定します」 ✅ 「どこを固定するか、どこに力が掛かるか、を指定します。実際の使われ方を教えてあげるイメージです」
よくある操作の翻訳
「選択」
❌ 「エンティティを選択します」 ✅ 「線や面をクリックします。2D CADで線を選ぶのと同じです」
「確定」
❌ 「OKボタンをクリックします」 ✅ 「決定します。2D CADでEnterキーを押すのと同じです」
「キャンセル」
❌ 「コマンドをキャンセルします」 ✅ 「やめます。2D CADでEscキーを押すのと同じです」
「元に戻す」
❌ 「アンドゥします」 ✅ 「一つ前に戻ります。2D CADのCtrl+Zと同じです」

