大学における学修データの活用は、「集める」段階から「使う」段階へ移りつつあると言われています。文部科学省が平成29年度に実施した調査(767大学が回答)では、GPA制度を導入している大学が93%、学修時間や行動を把握している大学が86%にのぼる一方、教育課程を通じて学生の学修成果を把握している大学は53%、学修ポートフォリオを提供している大学は36%でした。
学修データ活用の壁は「集めた後」にある
上の数字は少し前の調査ですが、データを持っていることと、それが誰かの判断や行動に結びつくことのあいだには距離がある、という構図は今も変わらないのではないでしょうか。IR部門が分析し、報告書に整える。その流れはもちろん大切です。ただ、最も近くで学んでいる当事者、つまり学生本人の手元に届く場面は、まだ多くないようにも見えます。
履修登録期の窓口で、学生が「自分は今どのくらい単位を取れているのか」を職員に尋ねる光景は、多くの大学でおなじみでしょう。数字は学内のどこかにあるのに、本人からは見えにくい。見えれば本人が気づけたはずのことを、面談や通知で後から伝えている、という見方もできます。
日本の大学に固有の事情:データが部署ごとに散らばる
日本の大学では、履修と成績は学務システム、課題や出席はLMS、貸出履歴は図書館、面談記録は学生支援、と、部署ごとに最適化されたシステムが並ぶことが少なくありません。それぞれが合理的に作られてきた結果であり、誰かの落ち度ではありません。ただ、横断して一枚の画面にしようとすると、「誰がSQLを書くのか」「個人情報の扱いは誰が決めるのか」「年度替わりの名簿更新のたびに作り直すのか」といった、現場の運用負荷が一気に表面化します。
海外でも事情は似ています。英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンは、Canvasへの全学移行にあわせて、同学の学習分析(Imperial Learning Analytics)を更新しており、LMSから得られる均質なデータが分析の土台になること、そして評価の設定が分析の質を左右することを説明しています。データの活用は、システムの入れ替えだけでなく、授業設計や運用とセットで考える課題だという示唆ではないでしょうか。
標準規格と「大学自身で作る」見せ方という方向性
こうした散らばりに対しては、標準規格でつなぎ、見せ方は大学が決める、という方向が現実的に思えます。学習活動のデータを共通の形式で扱う規格としては、1EdTechのCaliper Analyticsがあり、外部ツールとの接続にはLTI 1.3があります(LTI 1.3でつなぐ)。決まった形に合わせるのではなく、規格を共通の土台にして、見せ方を各大学が選べる状態が望ましいのかもしれません。
その一例として、ヨウム株式会社のyoumu perch.シリーズにはperchlenz.(LENZ)があります。複数のデータソースを横断してSQLビルダーで集め、グラフとウィジェットにし、ダッシュボードやフォームとして配布する製品です。学生はログインすると、自分のカレンダー、時間割、学修成果のグラフ、TODOが並ぶ画面を見られます。「大学がほしい見え方を、大学自身で作れる」ことを考え方の中心に置いています。なお、Canvas LMS は Instructure, Inc. の商標であり、youmu perch. はヨウム株式会社の製品で、Instructure, Inc. が提供・保証するものではありません。Canvas LMS 自体についてはCanvas LMS JPをご覧ください。
まとめ
学修データの活用を一歩進めるとは、分析の精度を上げることだけでなく、集めた数字を学生本人に返す見せ方を設計することでもある、と考えられます。データは部署ごとに散らばっていて当然であり、標準規格でつなぎ、見せ方は大学自身が決める。その順序で考えると、現場の負担も、個人情報の線引きも、議論しやすくなるのではないでしょうか。まずは「学生にいちばん見せたい一画面は何か」を、教務・IR・情報センターで話してみるところから始められそうです。
参考文献
- 文部科学省「大学における教育内容等の改革状況について(平成29年度)」 — GPA、学修成果の把握、学修ポートフォリオ等の実施状況調査
- Imperial College London「Canvas & Imperial Learning Analytics」 — Canvas移行に伴う学習分析の更新
- 1EdTech「Caliper Analytics」 — 学習活動データの共通規格



