授業継続 バックアップ 大学 ― 全部を複製せず、当日の教材だけを守るという発想

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授業継続のバックアップを大学として考えるとき、「すべてを別の場所に複製しておく」という発想がまず浮かぶのではないでしょうか。2026年春、米国で Canvas LMS に関わるサイバーインシデントによるサービス停止が起き、数千の大学・高等教育機関に影響が及んだと報じられました。事業継続の観点からこの出来事を振り返ったURMIA のブログは、学習プラットフォームがもはや「支援システム」ではなく基幹インフラになっていると指摘しています。

授業継続のバックアップ、「全部複製」が難しい理由

EDUCAUSE Review の記事によれば、5月15日に開かれた会員向けの QuickTalk(300人超が参加)で、障害発生時に継続計画があったと答えたのは35%、なかったのは44%、不明が20%でした。計画があった場合も、その多くはCOVID-19期に作ったもので、オンラインへの移行を想定しており、プラットフォームそのものが止まる事態は織り込まれていなかったそうです。

では全体を複製すればよいかというと、そう簡単ではありません。同じ記事では、二次的なプラットフォームに重複したコースサイトを作ると教員の負担が大きいこと、独自の「シャドーLMS」は資源を要し、クラウドへ移行した理由と相反しかねないことが論点として挙げられています。LMSのバックアップ手段を検討中と答えたのは19%にとどまり、主な懸念はコストでした。

複製の範囲を広げるほど、維持する手間も、点検すべき対象も増えます。「全部を守る」ことが、かえって「何も守れていない」状態を招くことはないでしょうか。

日本の大学で見落とされがちな、複製に伴う情報管理の負担

もう一つ考えておきたいのが、複製の数だけ管理すべき場所が増えるという点です。EDUCAUSE の記事も、可用性を高める手段が、アクセシビリティ、データガバナンス、セキュリティといった新たな課題を生みうると述べています。名簿、成績、提出物、学生の成果物を別の場所に写せば、そこにも個人情報が存在することになります。

日本の大学では、年度替わりの名簿更新、非常勤講師の入れ替わり、授業初回の集中など、LMSの利用が特定の時期に偏る事情があります。情報センターが限られた人員で運用している大学も多く、バックアップ先のアカウント管理や保管期間の設定まで担うのは、なかなか重い仕事です。関連して、外部連携の鍵と権限の年次点検についても以前書きました。守る対象を増やす前に、守る範囲を決めるという順序もあるように思います。

授業継続を支える範囲を「当日の教材」に絞る

EDUCAUSE の記事は、継続の要点として、教員が学生名簿の取得先を把握していること、重要な教材をLMSの外にも持っておくこと、代替の連絡手段を決めておくことを挙げています。そこから導かれるのは、止まったその日の授業を成り立たせるのに必要なものから考える、という見方かもしれません。前期末の試験や成績処理のような複雑な業務を丸ごと肩代わりするのではなく、まず「今日の授業で教員が手に取る教材」に限って備える考え方です。全体像は以前の記事でも触れました。

こうした発想で作られたのが、ヨウム株式会社の youmu perch. シリーズの perchglide. です。Canvas LMS に接続できない日でも、当日の教材を学内から取り出せるようにする製品で、ログインも保管も Canvas とは別に持ちます。扱うのは、その回のページ、配布ファイル、当日締切の課題の説明、直近7日のお知らせ、シラバスまで。課題の提出、成績、小テストや試験の設問、動画などは対象外です。範囲を絞ること自体が、複製に伴う負担を抑える設計になっています。

まとめ

授業継続のバックアップは、大学にとって「どこまで守るか」を決める作業でもあります。全部を複製する案は、維持の手間と情報管理の負担を伴います。まずは当日の授業に必要な教材に範囲を絞り、教員が自分で取り出せる手順を決めておく。その上で、必要に応じて範囲を広げる、という進め方も選択肢のひとつではないでしょうか。

Canvas および Canvas LMS は Instructure, Inc. の商標です。youmu perch. はヨウム株式会社の製品であり、Instructure, Inc. が提供・保証するものではありません。

参考文献

Picture of 倉持智明

倉持智明

ヨウム株式会社代表取締役

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