「学修成果 可視化」という言葉は、いまや大学の会議資料で目にしない日がないほど定着しました。2026年2月の中央教育審議会大学分科会大学院部会の資料でも、2019年の「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」以来、学修成果の的確な把握・測定と公表が求められてきたことが整理されています。GPA、ナンバリング、履修系統図、IRの整備状況なども、教育の質を把握する手段として位置づけられています。
学修成果の可視化は、何から始めればよいのか
指標を並べることと、現場で使える形に整えることのあいだには、少し距離があるのではないでしょうか。たとえば認証評価の前年、各学部から集めた資料をIR担当者が表計算ソフトで一つにまとめていく。そんな光景に覚えのある大学は少なくないはずです。
前述の資料では、可視化の対象として、学修時間、学生の成長実感や満足度、アセスメントテストの結果、卒業後の進路などが挙げられています。どれも大切ですが、すべてを一度に揃えようとすると、集計そのものが目的になりかねません。まずは「誰が、何のために、どの画面で見るのか」を決めるところから始める、という進め方もあります。
学長室や教務の方にとっては大学全体の傾向が、学科の教員にとっては自分の科目と学生の動きが、学生本人にとっては自分の歩みが「見たいもの」です。見る人が違えば、同じデータでも見せ方は変わります。
日本の大学に固有の事情 ― データはあるが、散らばっている
履修や成績は学務システム、授業での活動はLMS、出席は別のシステム、アンケートは学内の別のサーバ。データはたしかに存在するのに、一か所で見られない、という声はよく聞かれます。年度制のもとで、学科ごとにディプロマ・ポリシーの言葉も、見たい指標も異なります。「全学共通の画面を一つ用意すれば足りる」とは言いにくいところです。
担当部署もIR室、教務課、情報センター、各学科に分かれ、「今年は誰が集計表を作るか」が毎年の小さな負担になりがちです。海外でも事情は近く、LMSの学習データが増える一方で、外部ツールが集めたデータを大学が活用しにくい点が早くから議論されてきました(Higher Ed Dive, 2015)。
もう一つ外せないのが、学生の個人情報の扱いです。集めること以上に、「学生本人に還元される見え方になっているか」という問いが大切になるのではないでしょうか。学生向けの見せ方については、以前の記事でも触れています。
標準規格と「大学自身で作る」見え方
相互運用の面では、LTIが外部ツールの接続を、1EdTech の Caliper Analyticsが学習活動データの記述と共有を、それぞれ標準化する取り組みとして知られています。標準に沿っていれば、大学は必要な道具を後から選び、データの出入り口も見通しやすくなります。囲い込まれない、という点でも意味のある考え方です。
そのうえで次の論点になるのが、「見え方」を誰が決めるかです。ヨウム株式会社の youmu perch. シリーズの perchlenz. は、データソースを登録してSQLビルダーで集め、グラフとウィジェットに仕立て、ダッシュボードやフォームとして並べて配布するという4つの手順を、教員や運営者が自分たちで進められる製品です。大学がほしい見え方を、大学自身で作る、という考え方に立っています。学生はログインすると、自分のカレンダーや時間割、学修成果のグラフ、TODOを見られます。
なお、Canvas および Canvas LMS は Instructure, Inc. の商標です。youmu perch. はヨウム株式会社の製品であり、Instructure, Inc. が提供・保証するものではありません。Canvas LMS の概要はこちらをご覧ください。
まとめ
学修成果の可視化は、指標を増やすことよりも、「誰が、何のために見るのか」を先に決めることが出発点になるように思います。データが散らばっているのは、多くの大学に共通する前提です。そのうえで、標準規格でデータの出入り口を整え、見え方は大学自身が育てていく。そんな道筋も、選択肢の一つになるのではないでしょうか。
参考文献
- 学修成果の可視化に関する国際的な状況について(中央教育審議会大学分科会大学院部会 第123回資料、2026年2月19日) — 学修成果の可視化と質保証の論点整理
- 1EdTech Caliper Analytics — 学習活動データの標準規格
- Caliper Analytics advances next frontier for data(Higher Ed Dive, 2015年10月28日) — 学習データの相互運用をめぐる議論



