LTI 1.1 から 1.3 への移行が、静かに話題になる理由
LTI 1.1 から 1.3 への移行は、大学の情報センターの年度計画のなかで、いつのまにか「そのうち」の項目になりがちな課題ではないでしょうか。1EdTech は LTI の公式ページで、LTI 1.3 を現行版とし、OAuth2 と JSON Web Token に基づくセキュリティフレームワークによって認証モデルを改善したと説明しています。さらに LTI Advantage として、成績を返す Assignment and Grade Services、名簿や役割を扱う Names and Role Provisioning Services、教員が外部コンテンツを選んで埋め込む Deep Linking の3つが加わります。
海外では、LMS ベンダー各社が旧版のサポート整理を案内する動きもあります。たとえば Blackboard は LTI 1.1 サポートの終了を告知し、D2L も 1.1 から 1.3 への移行の道筋を公開しています。時期や条件は製品ごとに異なりますので、自学が使う LMS の公式情報で確かめることが前提になります。
日本の大学で「外部ツールの棚卸し」が難しい事情
棚卸しといっても、現場では簡単ではありません。学部ごとに導入された小テストツール、ある教員が個別に追加した動画サービス、数年前の担当者が設定したまま引き継ぎ資料に残っていない連携。年度替わりで担当が替わり、契約更新が年度末に集中する日本の大学では、「いつ、誰が、何のために登録したのか」が見えなくなりやすい面があります。
そのうえ、授業初回や履修登録期のように、止まると影響の大きい時期ほど変更を入れにくいものです。外部ツールが動かなくなってから原因を探すのではなく、静かな時期に一覧をつくっておく。それだけで、ずいぶん落ち着いて判断できるようになるという見方もできます。Instructure のコミュニティにも LTI 1.1 から 1.3 へのツール移行をめぐる議論があり、Canvas LMS では LTI 1.3 ツールを開発者キーを用いて登録する仕組みが公式文書に記されています。各ツールについて、ベンダーが 1.3 に対応しているか、再登録に管理者のどの作業が要るかを、一覧の横に書き添えておくと後が楽になります。
標準規格に沿って、棚卸しを小さく始める
進め方は、大がかりでなくてよいのではないでしょうか。まず、いま Canvas LMS に入っている外部ツールを書き出す。次に、それぞれが LTI 1.1 か 1.3 か、あるいは別の仕組みかを確かめる。最後に、1.3 になって得られるもの、たとえば成績の返却や名簿の取得が授業運営にどう効くかを見て、順番を決める。利用の少ないツールは、移行ではなく整理という選択肢もあります。
この考え方は、前回の記事「LTI 1.3対応の見極め方」ともつながります。標準規格に沿ったツールであれば、大学が必要な道具を後から選んで足せますし、入れ替えもしやすくなります。ヨウムの youmu perch. も、共通基盤として LTI 1.3 で Canvas LMS の中から起動する作りにしており、LTI 1.3 でつなぐ考え方を日本の大学の運用に添えるものです。なお、Canvas LMS は Instructure, Inc. の商標であり、youmu perch. はヨウム株式会社の製品です。
まとめ
LTI 1.1 から 1.3 への移行は、技術の更新というより、大学が使っている外部ツールを見渡す機会だと捉えることもできます。一覧をつくり、対応状況を確かめ、優先順位をつける。静かな時期に小さく始めておけば、履修登録期や授業初回に慌てずに済みます。標準規格に沿った道具を選ぶことが、結果として大学の選択肢を広げるのではないでしょうか。
参考文献
- Learning Tools Interoperability(1EdTech) — LTI 1.3 と LTI Advantage の概要
- Retirement of LTI 1.1 Support in Blackboard LMS(Anthology) — 他 LMS における旧版サポート整理の案内
- The Path to Migrating From LTI 1.1 to LTI 1.3 With D2L Brightspace(D2L) — 移行の考え方
- Developer Keys(Instructure) — Canvas における開発者キーの説明



