OER が示す、大学の教材共有という問い
OER 大学 教材共有という言葉を、学内の会議で耳にする機会が増えたのではないでしょうか。OER(Open Educational Resources)とは、パブリックドメイン、あるいは公開ライセンスのもとで、自由に利用・改変・再配布できる教育資料のことです。2019年11月にはUNESCOが総会でOERに関する勧告を採択し、この分野で初めての国際的な規範文書となりました。
勧告は、OERを作り・使い・改変し・共有するための人材の力量づくり、支える政策、質と公平性への配慮、持続可能なモデル、そして国際協力という五つの領域を挙げています。ここで目を引くのは、「無料で公開すること」そのものより、教員が安心して使える環境と仕組みに重心が置かれている点です。教材をただ並べても、授業で使われなければ資産にはならない、という見方もできるでしょう。
日本の大学に固有の事情 ― 教材は「個人の仕事」になりやすい
日本の大学では、教材は長らく教員一人ひとりの工夫の結晶として扱われてきました。それは授業の質を支える大切な文化です。一方で、非常勤講師の交代や教員の異動、年度替わりのたびに、科目の教材が引き継がれにくいという現実もあります。教材共有の議論は、海外の事例を眺める前に、まず学内の足もとにある「引き継ぎ」の話から始まる場合が少なくありません。
もう一つは権利の整理です。講義スライドには、他者の図表や写真が混ざっていることがよくあります。公開に踏み出せない理由の多くは、意欲の不足ではなく、「どこまでが自分の著作物か」を確かめる時間が取れないことにあるのではないでしょうか。公開ライセンスの代表であるクリエイティブ・コモンズは、六つのライセンスを用意しており、いずれも作者のクレジット表示が前提になっています。改変や営利利用の可否を選べるため、「全部を開く」のではなく「開ける範囲を選ぶ」ことができます。
教務や情報センターの視点では、公開の可否を教員任せにせず、学内で一定の目安を持つことが助けになります。科目ごとに「学内限定」「他大学と交換可」「公開可」といった段階を決めておくだけでも、判断の負担はかなり軽くなるはずです。
標準規格で解く方向性 ― 開く前に、つなぎ方を整える
OER の価値は、教材が置かれた場所ではなく、授業の中で自然に使えるかどうかで決まります。そのため、LMS と外部の教材・ツールを標準規格でつなぐ考え方が重要になります。1EdTech が定めるLTIは、学習環境と学習ツールを、利用者が個別にログインし直すことなく接続するための規格で、LTI 1.3 ではOAuth2 と JSON Web Token に基づく認証が採用されています。規格に沿っていれば、大学は必要な教材やツールを後から選んで足していくことができます。
世界の大学とコース設計を交換する仕組みについては、Canvas Commons を使った教材共有の回でも触れました。あわせて、LTI 1.3 の考え方はLTI 1.3 でつなぐのページにまとめています。
ヨウム株式会社は、Canvas LMS を日本の大学で使いこなすための製品シリーズyoumu perch.を提供しています。いずれも LTI 1.3 で LMS の中から起動し、日本語の画面で動く設計です。なお、Canvas および Canvas LMS は Instructure, Inc. の商標であり、youmu perch. は同社が提供・保証するものではありません。
まとめ
OER 大学 教材共有の議論は、世界に向けて教材を公開するかどうかという二択ではなく、学内で教材をどう受け渡し、どの範囲まで開くかを選ぶ話だと整理できます。まずは科目ごとの公開範囲の目安を決め、ライセンスと出典の確認を習慣にし、そのうえで標準規格で外とつながる道を残しておく。そうした小さな積み重ねが、結果として授業資産を守り、国際的な交換にも備えることになるのではないでしょうか。
参考文献
- UNESCO — Open Educational Resources — 2019年採択のOER勧告の概要
- Creative Commons — About CC Licenses — 六つのライセンスと表示要件
- 1EdTech — Learning Tools Interoperability (LTI) — LTI 1.3 と LTI Advantage の解説



