Canvas Commons 教材共有 ― 世界の大学とコース設計を交換する

Canvas Commons 教材共有 - Canvas Commons 教材共有 ― 世界の大学とコース設計を交換する | YOUMU INC.

Canvas Commons の教材共有が示す、教材を「交換する」という発想

Canvas Commons 教材共有という言葉を聞いて、海外の大学で教員が互いにコースをやり取りする風景を思い浮かべる方もいるかもしれません。Commons は、Instructure のコミュニティ資料で「教育者が教材を検索・インポート・共有できるデジタルライブラリ」と説明されています。課題、ページ、モジュール、場合によってはコース全体を、ボタン一つで自分のコースに取り込める仕組みです。

共有の範囲は選べます。他の Canvas ユーザー全体に公開することも、自分の機関内の同僚にだけ見せることも、自分用に置いておくこともできます。ブリティッシュコロンビア大学(UBC)のように、コース自体を「登録者のみ」「学内関係者」「URLを知る誰でも」の三段階で公開する運用を紹介している大学もあります(UBC Open)。教材は一度つくって終わりではなく、他者に使われ、手直しされ、また戻ってくる。その循環を前提にした設計だと言えそうです。

日本の大学に固有の事情と、教材を開く難しさ

日本の大学でも、教材を開く試みは早くからありました。2013年には日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)が設立され、大学の講義を誰でも受講できる環境づくりが進められてきました。国際面では、文部科学省の「大学の世界展開力強化事業」でCOIL型教育(オンラインで海外大学と協働する学び)が支援され、上智大学などが取り組んだことも知られています(上智大学)。国際協働学習そのものについては、以前の記事でも触れました。

とはいえ、日常の授業レベルで「自分のコースを他大学の先生と交換する」ところまで進んでいる大学は、まだ多くないのではないでしょうか。理由は単純な意欲の問題ではないように思います。シラバスの様式、科目コード、学期の区切り、成績評価の慣習など、教材の外側にある「学務の型」が大学ごとに異なり、そのまま持ち出しても使えないことが多いからです。教員の手元には優れた教材があっても、それを他者が使える形に整える時間は、多忙な教育現場ではなかなか確保できません。

知財や学生情報への配慮も欠かせません。公開コースでは、採点済みの課題やコメントが非表示になるといった扱いの違いもあり、「何を開き、何を閉じるか」は、運用ルールとして学内で決めておく必要があります。

標準規格で解く方向性 ― 交換できる土台を先に整える

教材を交換できるかどうかは、突き詰めると「標準に沿っているか」に行き着きます。LMS と外部ツールをつなぐ LTI は、2019年に 1EdTech が LTI 1.3(LTI Advantage)の一般提供を発表し、Canvas、Moodle、Blackboard、Sakai といった主要 LMS が対応を表明しました(1EdTech)。教材とツールが共通の作法で動くなら、世界のどこかで磨かれたコース設計を、自校の環境に迎え入れやすくなります。

そのうえで残るのが、日本の大学ならではの「すき間」です。取り込んだ教材を日本語のマニュアルで支えたり、他の LMS の教材を移したりする部分は、国内の事情に寄り添う道具があると助けになります。ヨウムの youmu perch. は、LTI 1.3 を共通基盤に、こうした場面ごとの製品を添える取り組みです。Canvas LMS 自体は Instructure, Inc. の製品であり、youmu perch. はヨウム株式会社が提供する別の製品シリーズです。Canvas の日本での使い方は Canvas LMS JP もご覧ください。

まとめ

Canvas Commons 教材共有の本質は、機能そのものよりも、教材を「抱えるもの」から「交換するもの」へと捉え直す視点にあります。日本の大学には日本の大学の事情があり、すべてを開く必要はありません。ただ、標準規格に沿った環境を整えておけば、開きたいときに開ける選択肢が手元に残ります。自校の教材のうち、まず一つだけ学内で共有してみる。そんな小さな一歩から考えてみてはいかがでしょうか。

参考文献

Canvas および Canvas LMS は Instructure, Inc. の商標です。youmu perch. はヨウム株式会社の製品であり、Instructure, Inc. が提供・保証するものではありません。

Picture of 倉持智明

倉持智明

ヨウム株式会社代表取締役

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