講義動画の区切り方が、反転授業の予習を左右する
講義動画の区切り方は、反転授業の予習が続くかどうかを左右する要素の一つだと言われています。90分の講義をそのまま収録して事前学習に充てたところ、授業当日までに最後まで見た学生が少なかった――そんな経験をお持ちの先生もいらっしゃるのではないでしょうか。
edX の講義動画を対象にした Guo らの研究(2014年)は、約690万回の視聴セッションを分析し、動画が短いほど視聴が最後まで続きやすい傾向を報告しています。6分前後までの動画で視聴の持続が高く、それより長くなると途中で離れる割合が増えました。ただし対象は MOOC であり、単位のかかる大学の授業にそのまま当てはまるとは限りません。傾向として参照する、という距離感がちょうどよいように思います。
日本の大学の授業に固有の事情
日本の大学は、半期15回・1回90分という枠組みで授業が組まれています。シラバスには授業時間外の学修が記され、予習の質は教室での議論の深さに直結します。一方で、先生方が予習用に短い動画を撮り直す時間を確保するのは、授業準備と研究、学内業務を抱えるなかで簡単なことではありません。
実際、多くの大学では教室に設置された機材による自動収録が先に整い、「撮る」ことより「どう見てもらうか」が後から課題になります。非常勤の先生が多い科目では、動画の作り込みを求めること自体が難しい場面もあるでしょう。字幕の用意については以前の記事でも触れましたが、区切り方もまた、合理的配慮と同じく「見る側の事情に合わせる」工夫の一つと言えます。
そこで、収録は90分をそのままに、配信の側で意味のまとまりごとに区切る、という考え方が現実的になります。話題が変わる位置に目次をつけ、学生が必要な箇所から見られるようにする。撮り直さず、見せ方を変えるという選択です。
情報センターの立場からは、収録した動画の保管容量や再生負荷も無視できません。細かく分割して別ファイルにすると管理対象が増えますが、一本の動画に目次を付ける方式であれば、保管の形を変えずに見せ方だけを整えられます。教務の側でも、予習に要する時間の目安をシラバスに書きやすくなるという利点があるのではないでしょうか。
動画に問いを置き、標準規格でつなぐ
区切るだけでなく、動画の途中に小さな問いを置くと、予習は「見る」から「考える」へ近づきます。たとえば EchoVideo(Echo360)は、動画内に投票や小テストを挿入でき、学生が「分からない」の印や時刻つきメモを残せる仕組みを備えています。教員はその反応を手がかりに、授業の冒頭で扱う内容を絞り込めます。
こうした動画ツールが Canvas LMS の中から使えるのは、LTI という標準規格のおかげです。詳しくはLTI 1.3 の解説ページに譲りますが、動画だけでなく、読解や相互評価の道具も同じ規格で必要に応じて足していけます。動画に書き込める余白の話と合わせて読んでいただければ幸いです。
なお、ヨウム株式会社の youmu perch. は、こうした道具と大学の運用とのあいだを日本語でつなぐ製品シリーズです。Canvas LMS は Instructure, Inc. の商標であり、youmu perch. はヨウム株式会社の製品です。
区切り方の正解は一つではありません。ただ、「長いから見られない」と諦める前に、配信側でできる工夫が残されていることは、知っておいて損のない視点ではないでしょうか。
まとめ
講義動画の区切り方は、収録の手間を増やさずに予習の続きやすさを変えられる、地味ですが効果の見込める工夫です。研究は傾向を示すにとどまり、科目や学生によって最適な長さは異なるはずです。まずは一科目の動画に目次を付け、視聴の様子を見るところから始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献
- Guo, Kim & Rubin (2014) How Video Production Affects Student Engagement — edX の講義動画の視聴行動を分析した研究
- 1EdTech Learning Tools Interoperability (LTI) — 外部ツール連携の標準規格
- Echo360 — 動画プラットフォーム公式サイト



