LMS 教員マニュアル 日本語化 ― 移行後の授業初回を支える定着の設計

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LMS の移行が決まると、議論はつい教材のデータをどう運ぶかに集まります。けれども、学期が始まった最初の授業で教員の手が止まる原因は、データそのものより「どこを押せばよいか」にあることが少なくありません。LMS 教員マニュアルを日本語でどう整えるかは、移行プロジェクトの終盤に回されがちですが、定着を左右する静かな要因ではないでしょうか。

LMS 教員マニュアルが必要になる場面は、授業初回に集中する

教材の移行作業は、情報センターや教務の担当者が事前に進められます。一方、教員が新しい画面に初めて触れるのは、多くの場合、学期直前か授業の初回です。教室に向かう数分前に「出席の取り方」「資料の公開設定」「履修者の見え方」を確かめる、という場面を想像してみてください。

このとき手元にあるのが、英語の公式ドキュメントや、数十ページの操作説明書だとどうでしょうか。読む時間がないまま授業に入り、その後の問い合わせが情報センターの窓口に集まる、という流れは、多くの大学で経験されてきたことと思います。マニュアルの量ではなく、必要な場面で、必要な箇所にたどり着けるかが問われているという見方もできます。

加えて、教員の側にも事情があります。専任、非常勤、特任など立場はさまざまで、LMS に割ける時間も慣れも一様ではありません。「全員が同じ研修を受ける」前提を置きにくいことが、マニュアルの設計を難しくしています。

日本の大学に固有の事情 ― 年度制、非常勤、そして「日本語の画面」

日本の大学では、4月と9月に学期が一斉に始まり、その直前に履修登録や時間割の確定が重なります。教員向けの案内に使える期間は、実は思うほど長くありません。さらに、非常勤講師の比率が高い大学では、年に一度しか学内に来ない方に向けた案内も必要になります。

もう一つは言語の問題です。海外発の LMS は、画面の多くが日本語化されていても、用語や操作の流れが日本の授業慣習と少しずつずれることがあります。「コース」と「科目」、「クラス」と「セクション」のように、同じ言葉が別のものを指すことも珍しくありません。こうした用語のずれを、大学の運用に合わせて言い換えて説明することが、マニュアルの役割の大半だという考え方もあります。

教材そのものの持ち運びについては、標準規格が整いつつあります。たとえば 1EdTech のCommon Cartridgeは、教材や評価課題をひとまとめにして、異なる LMS 間で受け渡すための規格です。ただし、規格が運ぶのは教材の中身であり、教員が迷わず操作できるかどうかまでは運びません。その部分は、各大学が自分の言葉で補う領域として残ります。なお、移行前の教材整理の考え方は、以前の記事でも触れました。

標準規格と「止まり木」で、定着を設計する

定着の設計を、三つの観点で整理してみます。一つ目は、場面別の短い案内です。「授業の前に」「授業中に」「学期末に」と時間軸で区切り、1項目を1画面で完結させます。二つ目は、大学固有の用語集です。学内で使う言葉と LMS の用語を対応づけておくだけで、問い合わせは目に見えて減ると言われます。三つ目は、更新の担い手を決めておくことです。画面が変わるたびに直せる体制がなければ、マニュアルは数年で古くなります。

外部ツールとの接続を、LTI のような標準規格に寄せておくことも、実は教員の負担軽減につながります。LTI で呼び出すツールは、LMS の中から同じ入口で使えるため、教員に伝える操作の種類を増やさずに済みます。

ヨウム株式会社の youmu perch. では、perchshift. が他の LMS の教材を Canvas LMS へ移す場面を、perchguide. が教職員・学生向けの日本語マニュアルを担います。移行とマニュアルを別々の宿題にせず、同じ流れで考えられる、という程度の位置づけです。Canvas LMS 自体の日本での使い方は、Canvas LMS JP のページにまとめています。コース設計の型については、こちらの記事もあわせてご覧ください。

まとめ

教材の移行が終わっても、教員が授業初回に迷わなければ、はじめて移行は完了したと言えるのかもしれません。LMS 教員マニュアルは、操作の説明書というより、大学の運用と LMS をつなぐ翻訳の仕事です。場面別、用語集、更新の担い手という三点を、移行計画の早い段階から置いておく。それだけでも、学期初めの窓口の景色は少し変わるのではないでしょうか。

なお、Canvas および Canvas LMS は Instructure, Inc. の商標です。youmu perch. シリーズはヨウム株式会社の製品であり、Instructure, Inc. が提供・保証するものではありません。

参考文献

Picture of 倉持智明

倉持智明

ヨウム株式会社代表取締役

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