大学の相互評価が「やってみたが続かない」理由
大学の相互評価(ピアレビュー)とは、学生が互いの成果物を見て評価し合う活動である。東京大学の教育学習支援の解説では、教員の評価負担を軽くしながら学生に評価者の視点を育て、自分にはない視点に気づく機会になる、と整理されています。成果物を周囲の学生と交換すればよいため、大人数の授業でも使いやすいとも述べられています。
ところが、現場の教員からは「一度試したが、翌年は元の形式に戻した」という声も聞こえてくるのではないでしょうか。理由は活動の意義よりも、運用の手間にあることが多いように思われます。提出物の割り当て、締切の管理、コメントの回収、未実施者の確認。紙やメールで回すと、授業一回分のはずの活動が、週末まるごとの作業になってしまう。続かないのは、教員の熱意が足りないからではなく、仕組みが追いついていないからだという見方もできます。
日本の大学で相互評価を運用しにくい事情
日本の大学には、相互評価を難しくする事情がいくつかあります。履修者が百人を超える教養科目、複数の教員で運営する共通科目、十五回の中に評価活動を収めなければならない学期の短さ。そのうえ、匿名にするか、評価の観点(ルーブリック)をどう示すか、成績にどこまで反映させるかは、科目ごとに判断が分かれる。
前述の解説は、コメントが短く素朴なものになりがちな場合の対応として、観点についての質問、事前の練習、良い例と悪い例の提示、教員によるコメントの確認を挙げています。つまり、相互評価は「学生に任せる」活動ではなく、教員が丁寧に設計する活動である。評価を教員だけで抱えず学生の力も借りるという方向性は、私学高等教育研究所の報告でも、評価活動の自律化とピア・レビューによる知識共有というテーマで論じられています。設計に労力を使いたい教員にとって、割り当てや回収といった事務を肩代わりしてくれる道具があれば、ありがたいはずです。
標準規格で選ぶ、相互評価の道具
相互評価の道具は、LMS 標準の機能で足りる科目もあれば、専用のツールが合う科目もあるでしょう。そこで意味を持つのが、標準規格による連携です。1EdTech の LTI は、LMS と外部ツールを標準的な方法でつなぐ技術基準で、1.3 では OAuth 2.0 と JSON Web Tokens に基づくセキュリティの枠組みが導入されました。LTI Advantage には、成績サービス(AGS)、ユーザー・ロール情報サービス(NRPS)、ディープリンキングが含まれます。相互評価に引き寄せて言えば、名簿を二重に持たずに済み、結果を成績簿に戻せる、ということです。
こうした規格に沿ったツールであれば、大学は必要な道具を必要な科目から試し、合わなければ入れ替えることができます(詳しくはLTI 1.3 対応の見極め方もご参照ください)。ヨウムの youmu perch. シリーズの perchpeer. も、Canvas LMS の中から LTI 1.3 で起動する、学生どうしの相互評価のための製品です。講義動画に書き込む活動との組み合わせはこちらの記事でも触れました。なお、LTI 1.3 でつなぐ考え方は、相互評価に限らず他の道具にも通じます。
まとめ
大学の相互評価は、意義が広く認められている一方で、運用の手間が続かない原因になりがちです。割り当てや回収といった事務は仕組みに任せ、教員は観点の設計とコメントの質に力を注ぐ。そのために、LMS と標準規格でつながる道具を選ぶという考え方は、一つの現実的な選択肢ではないでしょうか。まずは一科目、一回の活動から試してみるのが、無理のない入り口だと思います。
参考文献
- ピアレビュー(東京大学 教育学習支援) — 目的、効果、実施上の留意点
- 評価活動の自律化とピア・レビューによる知識共有(私学高等教育研究所) — 評価活動の充実に関する報告
- Learning Tools Interoperability (LTI)(1EdTech) — LTI 1.3 と LTI Advantage の概要
Canvas および Canvas LMS は Instructure, Inc. の商標です。youmu perch. シリーズはヨウム株式会社の製品であり、Instructure, Inc. が提供・保証するものではありません。



